パラドックス・クロウ・ジャック×遊星
なぞめいたギャグ。
もし映画でこの二人が出てきたら・・・という妄想。
前略、
奪われたスターダストを取り戻すために、赤き龍に導かれ、オレは過去の世界へとやってきた。
そこで出会ったのは、「伝説」と呼ばれた決闘者。結城十代さんと武藤遊戯さん。
オレはその二人の決闘者と共に、未来から来たと言う男、パラドックスと対峙した。
オレ達三人、それぞれの時代、護りたいモノのために・・・。
ああ、そこまでは良かったんだ・・・。
そこまでは・・・。
未来からの言葉
未来から来た男は確かに、そう言った。
その言葉を聞いて、言葉にならない言葉を発したのは、オレの隣にいた十代さんだった。
それはそうだろう・・・
オレのスターダストを盗み、世界の歴史を変えるため、それぞれの時代からカードを奪っている男、パラドックス。
恐らく、初代決闘者である遊戯さんですら、最強であろうと思われるこの男は、変形して宙に浮いた白いDホイールに乗り、見下しているその男は、オレに向かって一言こう言ったのだ。
「私のものになれ」
と・・・。
それは十代さんや彼と融合した精霊の声でも、遊戯さんのエースモンスター2体の声でもない。
間違いなく、あの金髪の男の口から発せられた言葉だった。
「スターダストを奪ってから君を間近で見て気が変わった、どうだ?私の配慮にならないか?」
いっきに静かになった空気を裂くように、オレは必死で腹の底から声を出した。
「い・・・いや、ちょっと待ってくれ!」
戦いの最中に今までに見た事の無い笑顔をオレに向ける・・・。そ・・・そんな眼でオレを見ないでくれ!
オレはゆっくりと十代さんの方を向いた。
十代さんはポカンと口を開けてその言葉を聞いている。その後にいる精霊すら眼を開いて唖然としているし・・・。
という事は・・・。
オレは遊戯さんの方を向く。
流石は歴代最強と言われた決闘者だけはある。
殆どポーカーフェイスを崩さない程度の表情で驚いていた。勿論、彼のエースモンスター、ブラックマジシャンも似たような事になっている。もう一体の弟子の方は顔を両手で押え、なにやら顔を赤くして嬉しそうな顔をしているのだが・・・。
「ゆ・・・遊星・・・」
オレの視線に気付いて遊戯さんがこちらを向く。
「フ、流石の名も亡きファラオも驚いているようだな」
それはそうだろう。そう思ったが上手く声が出ない。
「・・・パラドックス・・・お前・・・」
隣で十代さんが声を発した。良かった、十代さんは何か言ってくれる・・・。
「本当は遊星と仲良くなりたかっただけだったんだな!?」
後頭部にダイレクトアタックを食らわされた感じがした。十代さん!違う・・・そんな嬉しそうな顔で答えないでくれ!
チラ、と彼の後ろを見れば、オレの気のせいか・・・ユベルが頭を抱えている・・・。
「なんだよ、それならこんな事しなくったって、そう素直に言えば良かったのに!」
『違うよ、十代・・・』
呆れている・・・精霊までもが呆れるだなんて。
「さあ、今ならサレンダーしても、そこにいる彼らは助けよう・・・それに」
そう言って手を差し出すパラドックスに対し、オレはさらに頭を抱えた。
「もし君が私のこの言葉を受け取ってくれるのならば、君にスターダストを返し、このまま決闘を中断して私は未来へ戻ろう」
「な・・・!それは本当か?!」
「勿論、君も一緒にだ」
何でだ!?そう叫びたかったが言葉が出ない。「え〜、オレも一緒に行って見たい!」なんて言っている十代さんに対しても何か言いたかったが、それどころではない。
ニッと笑うパラドックスに対し、オレは静かに眼を閉じた。
しかし、もしオレがパラドックスと共に未来へ行けば、この惨劇はなかった事になる。それに未来・・・オレ達の住む街も人も何事もなかったようになる・・・。
一瞬、脳裏にオレを待ってくれる仲間の姿が映し出された。
もし、あいつの言っている事が本当なら。
クゥ・・・
黒い鎧を纏ったスターダストが、こちらを見つめる。
そうだスターダスト、オレはお前を助ける為ここに来た理由もあるんだ。
未来の仲間やお前が無事ならば・・・。
ここまで来てくれた遊戯さんや十代さんには悪いけど、これ以上の犠牲を抑える事が出来るなら・・・。
「・・・解った」
オレはそう言おうとした瞬間だった。
「「遊星っ!!」」
一瞬、聞きなれた声が響いたと思った矢先、空の一部が丸く開き、その中から甲高い声を発して紅き龍が姿を現す。
「お?何だ??」
十代さんが不思議そうに空を見上げると、頭上を飛び去る赤き龍の腹部から見慣れたDホイールが二台、割ってはいるように目の前に現れた。
見慣れた、白と黒の二つのDホイール・・・。
「助けにきたぜ遊星!」
「無事か!?遊星!」
「ジャック!?クロウ!?」
Dホイールに跨りながら振り向く二人にオレは声をかける。どうして二人がここに・・・?
「心配になってよ、いてもたってもいられなくなって紅き龍の力で追いかけてきたんだよ」
「どうやら無事らしいな」
言いながら二人はDホイールから降り、メットを外す。その二人を見てパラドックスの表情が険しくなる。
「ほう・・・未来のキングとその仲間か?」
自分を見下すその姿が癇に障ったのか、ジャックが怒りを露にする。
「フン、どうやら己の身分をわきまえない奴のようだな」
そのままデュエルディスクを装備する二人に対し、遊戯さんが叫ぶ。
「駄目だ二人とも!その男は危険すぎる!」
しかしこちらを振り向いた二人の表情、それはまるで十代さんや遊戯さんが決闘していた時と同じ、自分より強い強敵に出会えた時の嬉しそうな表情。
「何いってるんだよ遊星!こいつはオレ達に任せてくれよ!」
「そうだ!こんな奴にこのオレが負けるわけがないだろう!」
その代わり、そこにいる武藤遊戯と決闘させると約束しろ、そう言いながら二人はデッキをシャッフルし、デュエルディスクを起動させる。
「ジャック・・・クロウ・・・」
ポン、と肩に手を置かれる。少し苦笑しているものの、遊戯さんはオレを見て言ってくれた。
「君の時代にも、君を思う大切な仲間がいるんだな・・・」
オレの仲間達・・・ともに戦うためにここに・・・。
「二人とも、なら、オレも一緒に・・・」
「遊星はテメーなんかに渡すかってんだ!!」
・・・ふにゃああぁぁ・・・
静かになった辺りで、十代さんの愛猫、ファラオの声が何処かで聞こえた。
「・・・今何て・・・」
「フン、未来を変えるとか、遊星を嫁に貰うとか言っていたようだが、あいつはオレのものだ!勝手な行動はしないでもらおうか?!!」
待て・・・ちょっと待ってくれっ!!
「ほう・・・ライバルがいるということは張り合いがあって良いな」
オレ達のライフがクロウとジャックに受け継がれ、フィールドに召喚されていたパラドックスのモンスターがジャック達に視線を向けた。
「上等だ!オレのBFでギタギタにしてやっから覚悟しろよ!」
「貴様など、我がレッドデーモンズドラゴンの炎の塵にしてくれる!」
「ならば、お前たち二人の力を私に見せてもらおうか?!」
だから待ってくれ三人とも!そんな戦い・・・
「「「決闘!!」」」
「スゲー!見たことないモンスターが沢山召喚されてるぜネオス!!」
『十代・・・感動するところではないと思うんだが・・・』
『お師匠様〜、あの遊星さんって方、?大丈夫でしょうか?』
『・・・(マスター・・・)』
「遊星くん・・・」
「遊戯さん・・・」
「・・・ぃぃ・・・仲間を持ったな」
「・・・(声・・・小さいです・・・)」
『何だか平和になりましたニャ』
『やれやれ・・・とんだ茶番だったよ』
『おや、遊星くんのスターダストがこちらを向いていますニャ?』
クルルル・・・
『何でいってるんですかニャ?』
『・・・そろそろ帰りたいってさ』
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不燃焼になりましたが、一度はやって見たかったです。後悔していません←
恐らくガチ的な意味でもBFが余裕で勝ちそうな気がしたりしなかったり。
遊星版だとギャグに陥るのに、十代相手だとシリアスになるのは何かの罠でしょうか・・・。