恋せよ青年ども
パラさん総受けで短編
アンチノミーの性格はブルーノっぽいです。
最終的にZOパラ
遥か昔のことだ。
好きな人に手作りのものを渡すという行事・・・。
こんな廃墟となった時代でそんなことを考えるのはどうかと思うが、正直、過去を変える為に黙々と作業をしていると、そんな事をフッと考えてしまうのだ。
「・・・っていうのが昔あったんだってね〜」
人間も面白いこと考えるよねぇ、と、キャハハ、とルチアーノが本を読みながら作業をしているプラシドに話しかける。
「邪魔をするなルチアーノ、それと、そんなくだらない事をいちいち報告しなくていい」
「何だ、つまんないの」と言葉を吐くと、その隣でプログラムを組み立てているアンチノミーに話しかける。
「ねぇねぇ、アンチノミーはどう思う?」
「そうだね、僕もあまり興味はないかもしれないなぁ、だってさ・・・」
くれる人いないじゃん?
「・・・寂しいね」そう笑いながらフ、とルチアーノは入り口に視線を送る。金髪の男が一人、何処かへ向かおうとしている。
「あれ?パラドックス何処行くのさ?」
Dホイールの調整中じゃなかったっけ?と声をかけるが、「ちょっと用があってな・・・」そう言うとパラドックスは振り向きもせずにその場から立ち去る。
プラシドとアンチノミーが彼が去っていった方を見つめる二人だったが、ポン、とルチアーノが手をたたく。
「どうせ僕は暇だし、ちょっと見てこようかなっと!」
パラドックスを追いかけていったルチアーノは、彼が自室に戻るのを知ると、扉の隙間からそっと部屋の中を覗く。
「ん?」
部屋の隅に置かれているテーブルで、なにやら作っているようだが、それが何かは見ることが出来ない。
何とかしてみようと、ルチアーノはしゃがみ込んだり、立ち上がったりして様子を伺おうとする。
「・・・あれって・・・」
「しかしパラドックスは何をしにいったんだ?」
「解らないけど・・・まぁ何時もの事だし、また足りないパーツ探しとかでも行ったのかな?」
「そうか、もしそうだとしたら、今日という日にふさわしいな」
「?どうかしたのかい?プラシド」
「いや・・・」そう言ってカチャ、とプラシドは目の前の機械の液晶画面にカレンダーを表示し、アンチノミーに、液晶から浮き上がる文字を指差す。
「2月14日は好きな相手に何かプレゼントするらしいぞ?」
「そうなんだ・・・」
フと、二人の動きが止まる。
―好きな相手
「・・・縁がないことだよね」
「たっだいま〜!」
うれしそうな顔をしてルチアーノが戻ってくる。しかし彼の視線の先は異様なまでの重い空気が漂っている。
「うわぁ、何この空気・・・凄い陰気臭いんだけど!」
「うるさい、用がないなら何処かへ行け」
カチャカチャと音を立てて機械を扱う二人。それぞれのDホイールの性能を高めるため、エネルギーの分配を異様な空気でこなしている。機械で出来たアームが試験管の中のエネルギーの元である液体を入れ、穴の開いた場所へと精密に収められていく。
「そういえば、さっきパラドックスの部屋覗いてみたんだけど、あいつ何作ってたんだろうねぇ?」
ガチャン
ピーピー!
試験管が壁にぶつかり液体が毀れ、部屋中にエラー音が鳴り響く。音に驚いたルチアーノが「ほあ?!」と間の抜けた声を上げる。
「どうしたのさ?プラシド!アンチノミー?!また1からやり直しじゃん!」
声をかけるものの、当の二人はその場で固まるだけであり、微動だにしようとしない。
「どうしたルチアーノ?」
「え?」と驚いて振り向くと、何か紙の包みをもったパラドックスが不思議そうな表情をしてたっている。
「あ、ちょうど良かった!実はさぁ、この二人いきなりエネルギー配分を・・・」
「ちょうど良かった!!」
バッとルチアーノとパラドックスの間にアンチノミーが割って入る。驚くルチアーノにきょとんとした顔でパラドックスはキリッとした表情のアンチノミーの顔を見る。似たような背丈に見えるがアンチノミーの方が背が高く、少し顔を上から覗くような風に見つめる。
「ちょっとエネルギーの配分が上手くいかなくてね、手を貸してくれるとありがたいんだ!」
「・・・あ、ああ、別にかまわないが?」
不思議そうな顔をしながらも、持っていた袋をルチアーノに持たせる。「どこだなんだ?」と声かけると、「こっちだよ」と嬉しそうに彼の腕を引っ張る。何時ものまじめな顔からは想像出来ないくらいの満面の笑みを浮かべて・・・。
「ちょっと待て!」
いきなり反対の腕を引かれ、パラドックスは一瞬つんのめった。プラシドが少し怒りを含んだ表情で二人を見据える。
「・・・どうしたプラシド?」
「実は、エネルギー配分をしている最中、オレの腕が異変をきたした。先にこちらを治してくれないか?」
バッと腕を見せる。「どこの部分に異常を感じる?」とパラドックスはプラシドの腕を曲げたり触れたりして尋ねる。
「一度メンテナンスをした方がよさそうだと思うんだが」
「あーれーぇ?プラシドどうしたのさ?なんだか凄い嬉しそ・・・イタッ!!」
プラシドの後ろから顔を覗かせたルチアーノは、彼の肘鉄を食らい、その場にしゃがみ込む。
「何すんだよ!そんだけ腕が丈夫なら、メンテ必要ないじゃんっ!」
「うるさい!静かにしていろ!」
「それだったらZONEに新しく腕作ってもらえばいいじゃんか!?」
紙袋を片手で抱え、頭を抑えながら言うルチアーノの言葉に、何かを思い出したかのように、反応するパラドックス。
「・・・そういえば、ZONEは?」
顔を上げてプラシド達を見る。
「ああ、確か・・・」
『私がどうかしましたか?』
扉が開き、機械に乗ったゾーンがふよふよと浮きながらこちらに近づいてくる。
「あ、お帰りZONE。実はさ・・・」
「ZONE!」
バッと、ルチアーノに持たせていた紙袋を取り上げZONEの元へと走りよる。
『おや、どうしましたか?パラドックス』
「・・・すまない、もう少し下に降りてくれないか?」
三人が不思議そうな顔をしている中、乗っている機械を地面ぎりぎりまでに降りたZONEの横へ歩み寄る。と、同時にカサカサと紙の袋を開ける。『おや?』と声を上げるZONEと同時に首周りに、ふわり、と薄い黄色の何かが巻かれる。
「・・・以前・・・機械の身体でも凍えると言っていただろう・・・?」
『マフラーですか、懐かしい・・・』
マフラーの端と端を軽く縛りながらパラドックスは下を向き、顔を赤くする。「・・・こんなプログラムなんて、捨て去ってよかったのに・・・」
『いえ、暖かいですよ・・・本当に・・・』
「ねぇ二人とも、何時までそうしてるつもりなのさ?」
ふあぁ、とあくびしながらルチアーノが黙々と作業を続けている二人に問いかけるものの、プラシド達は何もなかったかのように作業をしている。
しかしそんな二人の背中は異様なまでに寂しい雰囲気を漂わせている。
「そういえば、今日って確か2月1・・・」
ガシャン!
「・・・悪いけど、静かにしていてくれないかな?」
その後姿にビクッと身体を震わせるルチアーノは、「じゃあ僕は部屋に戻ろうかな」とそそくさとその場から立ち去った。
後に残るのは機械を動かす音と無言の男二人の背中のみ。
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パラさんはツンデレ&年上の人とか恩人とか好きなタイプになりそう。