満足で遊星ニョタ・総受け
見事なまでのキャラ崩壊
バン、と機械が破裂する音が廃ビルの中に木霊する。
男の短い悲鳴が木霊すると同時に山のように積まれたジャンク品の上へと仰向けに倒れる。
「やれやれ、結構手間取っちまったぜ」
パンパン、と手を払い、腕に付いていたデュエルディスクからのびてるロープを引っ張る。
相手のディスクが破壊されたと同時に外れた手錠を、鬼柳は慣れた手付きで自分のディスクに収納した。
「さてと、戦利品は頂いていくぜ」」
コツコツと足音を立てながら相手の縄張りの中から使えそうな物を探し出す。
「・・・お?」
がさがさと異様な臭いのするゴミの山を漁っていた、彼の手が止まった。
「いてぇええっ!!」
綿が飛び出しているソファで座っていたクロウが、眉間に皺を寄せ、大声で叫ぶ。
「煩いぞ貴様!大体こんな怪我をしたのは自業自得だろう!」
「んな事言ってもよ!昨日の雨で階段が滑りやすくなってたのが原因なんだからオレのせいじゃねえって!」
「フン、足元をしっかり見ていないからだ」
「んだと!!?」
「二人とも、いい加減にしないか」
はぁ、とため息をつきながら遊星は言う。同時に嬉しそうな顔をして扉を開けるリーダー・鬼柳の姿が目に映った。
「今帰ったぜ!」
嬉しそうな顔の彼を不思議そうな顔で見つめる遊星と、うつろな顔のクロウと怒り心頭なジャック。
「煩い、今取り込み中だ」
「何だよジャック、そんな顔してよぉ」
そんな顔してたら、オレみたいに幸せになれないぜ!と答える鬼柳に対し、「お前の場合は一年中春だろう?」とぼそりと呟くクロウ。
「そうそう、さっき倒した奴のアジトから良いもの見つけてきたぜ!」
右腕をずっと背中に隠していた鬼柳が、バッと画していたそれを取り出した。
「!な・・・何だそれは!?」
ジャックが唖然とした声を出した。それに気付いて後を振り向くクロウは、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「おい!ちょっと待て鬼柳!!それって・・・!」
「男だったらやっぱり一冊は大人な本くらい読まないとな!」
アハハ、と笑う鬼柳はソファの前のテーブルに本を広げると、「読むか!」と声を張り上げる。
「お・・・お前、そんなの広げるなって!!」
顔を真っ赤にしたクロウが顔を手で覆うが、指の間から視線を本に向けている。
「何だよクロウ、結構気になってるんじゃねえかよ!」
「な・・・何言ってんだ!オレはだな・・・!!」
「おい、さっさとそれを閉じろ!」
「何だよジャック、お前だって興味あるだろう?」
「何を言い出すと思いきや」とジャックが額に手を置く。あはは、と笑っていた鬼柳は、黙ったまま黙々と救急箱を閉まっている。
「お〜い遊星!お前もどうだ?」
バッと目の前に裸体の女性の写真を見せられるものの、直ぐに視線を逸らした遊星は立ち上がって救急箱を棚へと戻す。
「おいおい、無視かよ?」
「つか鬼柳、お前遊星の事考えてやれって!!」
「何言ってんだよ、オレはそれも含めて遊星に見せたんだよ、そしたら少しは女らしくなるだろ
?」
「お前!!女の遊星にアレを見せるバカが何処にいるんだよっ!!」
あーだこーだと騒いでいる二人を余所にジャックが無造作に置いてあった鬼柳のディスクをメンテナンスしている遊星に話しかけた。
「大丈夫か?」
「・・・ああ、気にしていない」
カチャカチャと音を立てながらディスクの内部を修理していく彼女を見て、ハァとため息をつく。
「まぁ、鬼柳の行動は何時もの事だからな、気にするほうがおかしいか」
腕を組み、横目でリーダーを見つめるジャック。顔を真っ赤にしながらも興味津々で本をちらちらと見つめるクロウに対し「これはお前の好みだろ?」などと指差し笑っている。
「う〜ん、でもやっぱりアレだな」
暫くして鬼柳が顎に手を置いて唸る。「今度は何だよ」とクロウが隣で答える。
「やっぱり同じ女でも遊星の方が胸は小っせぇな」
ガチャ、と遊星の手が止まる。それに気付いたジャックが慌てて「鬼柳!」と声を出すものの、等の本人は聞いていない。
「元が細いってものあるけどよぉ、でもやっぱり大きい方が男としては惹かれるよなクロウ!」
「ば!!だからそれを言うなって言ってるじゃねぇか!!」
修理をしている動作のまま固まっている遊星とニヤニヤしながら語っている鬼柳とクロウを交互に見つめつつ、ジャックは冷や汗を感じている。
「お、お前等・・・それ以上言ったら・・・」
「どうなんだよクロウ?お前も同じ意見だよな?」
「だああかああらあっ!!」
両手を拳にして、バッと天に上げるとクロウは叫ぶ。
「大きかろうが小さかろうか、オレは遊星のが良いんだって!!」
バサバサ、とアジトの屋根にとまっていただろうカラスが数羽、夕焼けの空に向かって飛び立つ音が響く。
あっけにとられているジャック、口を押えて笑いを堪えている鬼柳を見つつ、自分の発言に固まってしまったクロウは恐る恐る遊星の方を見る。
暫く固まったように動かなかった彼女だが、「遊星・・・」と呟くジャックの声に反応して、ネジの巻かれた玩具の如く、ガチャガチャと修理を開始した。
「あ・・・その・・・・」
「クロウ・・・」
「は、はいっ!!」とクロウは冷や汗を流しながらもビシッと背筋を伸ばす。「ディスク治してやるから、持ってこい」
不思議そうな顔をするクロウと鬼柳。「何だ、そこまで怒ってなかったのか」と思いつつのんきにハハハと笑う鬼柳。
しかし次の日、敵との決闘を始めようとする最中、鬼柳は罠が、クロウは魔法カードが暫く使えないという事態に陥り、結果、決闘には勝利したものの、かなりボロボロにされたのだった。
「・・・リーダーよぉ、後で誤りにいくぞ」
「・・・ああ・・・」
ジャックが一足先にアジトへ帰ると、そこには両手で両胸を押え、鬼柳が持ってきた本を見て背中に黒い影を背負っている遊星の姿を目撃した。
「・・・好きで小さいわけじゃない・・・」
「・・・取り合えず、落ち着け」
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遊星ニョタをもっと見たいとおっしゃってくださった方がいらっしゃったので第二段でございます。
青春まっしぐらな彼らならアーッな本を見つけたらこんな感じかなと・・・。
ひんぬーを静かに気にしていたら遊星は可愛いと思います。