終わらぬ夢


鬼→遊?

二人の決闘が始まった回の創作

 

 

 

埃の混じった雨が容赦なく降り注ぐ。

目の前に倒れているセキュリティの男の頭を、ゴリ、と土塗れの靴で踏みつける。顔にかかった血が水滴と一緒に顔を流れるのが解る。

頬を伝い、それを舌で舐め取ると、口の中に水と鉄の味が広がる。

「・・・邪魔するからだ」

呟くように、笑うように、男は口の端を持ち上げ、倒れた男の顔を蹴り飛ばす。

「鬼柳っ!!」

ばしゃばしゃと音を立てながら、一人の青年が息を切らしながら近付いてくる。

「どうして・・・何故なんだ!!」

 

お前はそんな奴じゃなかったはずだ−

 

 

ドォッっと言う音が耳に響く。驚きもせずに、彼はゆっくりと目を開く。

粗い岩肌を背に、腕を枕にして足を組みながら、稲妻の走る鉛色の空を眺めている。

「こんなところでお昼寝とは、良いご身分ね鬼柳」

コツ、と頭上で靴が石に当たる音を聞く。鬼柳は声の主には視線を送らず、ずっと空を眺めている。

黒い服に緑の縁取りの服装の女性は、長い髪を風に靡かせながら、凛とした声で寝転がっている男を見つめた。

「懐かしい夢を見てたぜ・・・」

「夢?」

「オレが『人間』だった時のな」

言いながら鬼柳は上半身を起こす。目の前に移る地平線の彼方にサテライトの町が見える。

「それより、お前こそこんな所に居ていいのかよミスティ、黒薔薇の魔女との決闘を放っておくつもりか?」

「まさか」とミスティは笑いながら彼とは違う場所を見つめる。「私は何時も勝手な行動を取っている貴方が少し気になっただけよ」

その言葉を聞くと同時に、ヒャハハ、と狂ったような笑いを上げながら鬼柳は立ち上がる。

「心配しなくても、あいつを痛めつける事は忘れちゃいないぜ!」

それに−。言いながら鬼柳はミスティの目の前に立つと、クイ、と顎を掴む。

「オレのことを気にかけてくれるなんて・・・可愛い事いってくれるじゃねぇか」

「何を言い出すかと思ったら」

パシ、と顎を掴んでいた手を叩く。

「ケッ、オレよりあの新入りを心配した方が良いんじゃねぇか?ジャックの事で戦う事が出来ない風に見えるけどよ」

「あの子は貴方が思っているほど弱い子じゃないわ、貴方こそ家族見たいに一緒にいた仲間を殺すことが出来て?」

何を言い出すかと思ったら!そう言うと鬼柳は腕を組み、狂った笑いを上げながら彼女に言い放った。

「あいつは裏切り者なんだよ!仲間なんかじゃねぇさ!あの野郎が苦しみ悶えながら死ぬ姿を早く見たくてしょうがないぜ!」

言うと鬼柳は、側に置いてある漆黒のDホイールに飛び乗る。獣のような金色の目がミスティを睨みつける。

「言っておくが、オレはオレの復讐の為にお前達と行動を共にしているだけだ、あいつを殺したらオレは後は好きにさせてもらうぜ」

「その後はどうするの?」

彼女の言葉に答えるように、ドゥッという重い音を立ててDホイールのエンジンをかける。

「生きてた時は、サテライトを制覇した!今度は全てを制覇するっつー夢でも持つか?!!」

耳を押えたくなるような音を立て、漆黒のDホイールがその場から走り去る。砂塵が風に乗り、ミスティの肌を掠める。

絹のような黒髪を掻き揚げると、彼が去っていった方向に視線をやる。遠く遥かに見えるもう一つの砂煙が、迷いもなくこちらに向かって進んでくるのが見える。

「夢・・・ね」

ふう、とため息をつくと、ミスティは自分の目的の地へと向かう。黒い髪が風にたなびき、

「死人が夢なんて見る事は出来ないでしょう」

 

 

 

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長編が手詰まりになってしまったので、リハビリがてらの話です;

シグナー一向の会話はあるけれど、ダグナー同時の会話ってないのが気になって気になって・・・。ミスティさんは冷静沈着、鬼柳はハイテンションなイメージが。とりあえずリハビリはジャ遊か鬼遊かクロ遊に手をだそう←